壁について考える④

こんにちは。LARKです。

本日は壁について~の第4回です。

ファサードの回で少〜し触れましたが、我が家のファサード面の外壁は2F部分の外壁をふかして、1Fを塗り壁/2Fをタイル外壁と素材を切替えています。

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今回はこの「ふかし」の意図について紹介していきたいと思います。

◆外壁ふかしを実施した意図◆
①デザイン性、外観の改善
②剛性UP(耐震、強度UP)
③通気層による断熱性と通気性の向上

①デザイン性の向上、外観の改善

始めに、外観の改善ですが、これは上記の記事や建築家の回でも紹介した通り、基本的に各構成材が真四角ないしは黄金比や青銅比、白銀比の様に整ったバランスで整えた方が幾何的にファサード(顔)として美しくなる と勝手に思い込んでいる為です。どうしても塗壁を拝みたかった事もあり、上下を見切る必要があり「ふかし」の手段をとりました。1番の目的はこれですかね。以前紹介した以下のアアルトの自邸も微妙に上下の凹凸をとる事で陰影もつき、彫りが出てカッコイイ印象をもっています。

アアルト自邸

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②剛性UP、耐震性の付与

2つ目は、家の剛性UP、耐震性のUPです。営業さん、設計さんに迷惑をかけつつも折衝しながら行き着いたふかしの断面構成は以下です。

ふかし断面構成

2×4材を縦・横に胴縁として設置し、さらに面材・防水透湿シートとする事でなんと2重壁構成としています。ここまでやったら付加断熱にしたくなったんですが防火の問題でNGとなりまして、通気層になっています。通常は面の構成が箱の構成となる事で大きな断面2次モーメントを付与し、曲げ剛性の向上と2重壁構成による抗せん断力を付与しています。また、POINTは壁の下端を階間より下げて、1Fと2Fを横断させる形で壁とした事で、2Fの層間変形を抑制する壁構成とした事です。疑似的に一つのBOX構成となるイメージでしょうか。

これにより、北面と東面の剛性率が増加する為、先に紹介した偏心率、ねじりを考慮(補強)する必要があり不安になりましたが、以下の動画が決心させてくれました。


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バランスと壁量の議論の中で、「バランスをとるために壁を減らすのであれば壁量を優先した方が良い」の言葉です。倒壊した原因調査とは別に、なぜ生き残ったのか調査の中でバランスが悪くても壁量があったものが残っているケースがあると仰られています。水平構面も強くする必要がありそうですが、やはり壁を強くし建物の剛性を上げる事を優先し、構造上壁では難しいバランスに関してはダンパー配置による全体調整とする方向で進める事にしました。下記記事でも紹介した通り、耐震・制振の基本方針として建物はやはり堅く作る事で固有周期を小さくし、「加振応答スペクトルの左にシフトさせ、変位応答の小さい領域(弾性域)で受止める」が鉄則かと。

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③2重通気層による断熱性と通気性の改善

最後に、通気層の2重化についてです。通気層っていって中々イメージが湧かないかもしれませんが、私の中でのイメージはこれです。

ロケットストーブ

キャンプをやる人は意味が伝わったかな?ロケットストーブという燃焼装置です。これは内部が熱せられる事で壁面温度が上昇し、わずかな通気層に自然対流(上昇気流)が発生し下部から効率的に空気(酸素)が供給される仕組みになっています。私は住宅の通気層も同様と思っています。太陽の輻射熱で外壁温度が上昇、通気層内の空気が温まり自然対流(上昇気流)が発生する事で通気・換気が完了する訳です。

この換気の目的は、燃焼用の空気ではなく木造住宅の最も天敵となる水分・水を外部に排出する≂内部の水蒸気の滞留を回避する 事にあると理解しています。

古い住宅で良く目にする「北面」の苔の生えた外壁 は太陽熱の取得が上手くいかずに自然対流が効きにくいのです。特に隣家に日射を遮られていると、北面に限らず苦しくなりますね。また、「通気」というくらいなので、出口や入口が塞がっている場合(例えば窓下の縦胴縁が完全に通気できていない場合など)は問題外ですね。

逆に冬の場合は内部が暖かい状況になる為、内部から熱伝導で通気層内面側の壁が暖められ換気が進む訳ですね。

これは内側の内壁も物理的には同様で、冬に室内湿度を上げている場合は最悪です。壁の内側にも空間があるので、壁面が暖められ内部で上昇気流が発生します。例えばコンセントの穴や床との取り合い(巾木)部分の気密処理が不十分の場合、この上昇気流に引っ張られる結果、室内の多量の水蒸気が冷たい屋外空間に供給され壁内結露に繋がりますだから内壁も内部空間の出口か入口をふさぐ「気流止め」が最重要になってくる訳です。

住宅の躯体の老朽劣化はこの水分対策(water proof)にある(と理解している)訳です。ただ、外壁通気に関しては外壁の自然対流だけで律速されている訳ではなく、入口・出口の圧力差もあろうかと思います。棟部で風が吹けば、動圧で風に引っ張られて屋根裏の空気が引っ張られます。結果出口から空気が抜ければ、入口から空気が供給されます。過去記事・屋根について考えるの「4.屋根勾配」を参照下さい。

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通気換気がしっかりできていれば、仮に少ししけったとしても乾燥タイミングで乾燥させられる訳ですね。

こうして、家は2重層の状態で構成されている訳ですが、2層状態という事は温度的にもある意味、層構造になっていると思っています。この温度バッファは熱貫流率にも実際は効いていると考えています。Ua値計算ではこの熱伝導率しかあまり議論されていませんが、実態は(物理的には)熱伝達のパラメータがしっかり存在しておりこの熱伝達は温度差と表層の速度に依存してきます。夏の場合は通気層の換気を進める程、温度を下げられるので内部との温度差が小さくなり熱伝達率は有利に働きます。逆に、冬場の場合は通気層の換気を進める程、冷たい外気が侵入してくる為温度差が大きくなって不利に働きます。ここで、2重通気層の効果がでます。主に1層目で換気が促進されるはずですので、2層目の温度低下を緩和できると勝手読みしています。

如何でしたでしょうか?自分でも「ふかし」を検討開始した時、ここまで考える事があると想定していませんでしたが、いろいろな物理的な意味が発生して一時期混乱しましたが、文献調査や情報収集をする中で最終的に「GO」判断をしました。

なんせ「施主責任範囲」なんで。でも、全てポジティブに働くと思ってTRYしてみます。耐震は立ち上がった後に評価する事はできませんが、通気・換気の所や熱伝達の差なんかは住み始めた後にレポートできる様になると思うので、整理が出来ましたら報告していきたいと思います。

ウィザースホームの営業さん・設計さんは本当に無茶を言う施主に付き合って頂き本当に感謝しかありません。でも技術の向上ってチャレンジしないと何も生まれませんからね。(住宅は全く専門外ですが)エンジニアにとってのこの「ふかし」の検討は大変面白い検討の一部分だったんです という報告で終わりにしたいと思います。