住宅設備の投資判断 NPV(Net Present Value)について

こんにちは。Larkです。

本日は、投資判断指標であるNPVについて記事にしたいと思います。

太陽光発電や蓄電池他、住宅設備、オプション設備について、施主は怒涛の決断・判断に迫られますね。そこで、なんとなく儲かるかも?とかでは決断の後悔や他にお金を使えば良かったかなぁ~とかの迷いに繋がると思います。すなわち「断固たる決意」が必要になります。

そこで、投資の世界で使用されているNPV(Net Present Value)について紹介致します。NPVを使用すれば、(その時点での判断として)正解だったんだとロジカルに判断できる(後悔はない)のでは?と思います。

NPV(Net Present Value)とは

定義

日本語では「正味現在価値」と呼ばれ、投資による利益の評価指標になります。現在価値とありますが、お金に対して「時間軸(利回り)」を考慮した評価をするのです。10年後の100万円と現在の100万円の価値は異なるのでこれを正しく評価していきます。特に、現在価値換算(正しい評価)ができていない事が特に住宅においては(YOUTUBEを見ている限り)多く伺える様に感じています。

NPV(正味現在価値)=PV(現在価値)-投資額

現在価値(PV)とは

現在価値はPV(Present Value)と表現され、現時点で将来獲得するお金の価値がいくらなのかを表します。まずは式を見て頂く方が早いかもしれません。

PV(現在価値)=n年後に受け取る金額/(1+利益率)^n

単純に、各年毎のメリット(投資効果)を単純に総和してはダメですよ。ちゃんと利益率・利回り分の回収遅れ(時間効果)をディスカウントして評価しなさいね。という事です。

やっている事は非常にシンプルです。

利益率(一般的には割引率)について

次に、PVを算出する上では上式の通り「利益率」を決めなければなりません。これは企業では各企業毎の一定の利益率を持っていると思いますが、個人に当てはめる場合どう考えれば良いでしょうか?詰まるところ、人それぞれかと思いますが、株式投資を実施している人であれば、住宅に投資しなかった場合に同じ100万円を3%~5%程度の利回りで運用できていたかもしれませんし、全く何にも投資もしない人であれば0%で上記の利回りは無視して良い事になります。IDECOやNISAをやっていない場合はこちらに同じ100万円を回せばある程度の利益率が確保できそうです。

結局のところ、想定期待利回りをいくつでおくか?次第でディスカウント量が変わるという事です。投資成績に応じて設定する事になるので、株式投資をしている方でも「アメリカなどの高配当・リスク商品」に投入している方と「低リターン・低リスクの債券」等に投入している方でも設定値は異なってきそうですし、持ち株会の入金を増やすとかその他の投資先もあるかもしれません。

いずれにしても、「自身の投資成績を評価する」事は別次元の問題なので、本章の説明はここまでにしておきます。

期間について

当然ですが、利回りを考える上で(期間)は非常に重要な要素になります。住宅ローンに関しても35年ローンと20年ローンでは大きな違いがありますよね。利率と時間には切っても切れない密接な関係があります。これに加えて投資期間(回収期間)を適切に見極める事は非常に重要となります。

企業や経営されている方は、経営環境変化のリスクを考えると(長期(大規模)投資)は当初計画前提の環境が変化する事によるリスクを考えると判断が難しくなる事が多い一方で、足元の様に「環境が激変してCO2や原材料コスト高が今後も継続する」となれば早く新しい環境対応へシフトさせないと企業存続が難しくなり、大規模投資も許容しなければいけない事もあり長期投資を視野にする事もあるかもしれません。

個人の場合は、定年退職タイミングなどの生活環境や収入の環境変化のタイミングが目標設定になるかもしれませんし、住宅規模では無く太陽光などの設備寿命の視点で10年~25年の投資回収期間設定が妥当なケースがあるかもしれません。

計算前提として、しっかり時間軸を意識した期間設定が重要になります。

話は少し脱線しますが、大谷選手。凄い契約しましたね。今回の報道からも大谷選手の謙虚さと同時に明確な「野球(勝利・優勝)」の為のアイディアが全面に伺えた内容でしたね。10年総額7000万ドル(1015億円)の異次元の契約金はアスレチックスやオリオールズ1チーム分相当だそうで、とんでもない金額である事は言うまでもないですが、10年契約後無利息の後払いとする事で、契約期間中は実質200万ドル(2億9000万円)という事で、チームのぜいたく税(大谷選手の節税も含め)の支払いを圧縮し、チームの更なる補強をし易い環境が整った訳です。上記の無利息の後払いは複利計算上では、上記の通り、とんでもない金額なので利回り計算をするととんでもないNPV(現在価値)効果がドジャーズには発生した事になり、その分さらに戦力強化に回せる訳です(言い換えると今回の契約により大谷選手が金を出して補強しているようなものです)。

実際に割引現在価値を計算されているサイトがありましたので無利息先送り効果を見ると(利回り4%、期間20年前提だそうです)563億円/1015億が具体的にドジャーズ側(大谷選手も勝ち・チームへの貢献に拘った結果)に有利に働いた金額となっています。本当に異次元の契約ですね。お金に執着があまりない野球大好き大谷少年だからこそできた契約や提案でしょう。逆にだからこその1015億円という異次元の内容になったのかもしれませんが、いずれにしても歴史的な内容だと思います。

bespoke-pro.jp

具体的なNPV計算

本章では、昨日記事にした蓄電池に関するNPVを具体的に紹介します。

まずは、各年度毎のメリットの計算が必要になります。蓄電池の効果はどのサイトでも「自家使用率を向上させ、単価の高い『購入電力』をミニマイズする事」にあろうかと思います。では自家使用率が蓄電池によりどれだけ上げられるか?がポイントになります。それでは、太陽光によるシミュレーションから確認しています。

参考にしたのは以下のHPです。

太陽光発電・蓄電システム シミュレーション(簡易版) | 京セラ

PVシミュレーション

簡易シミュレーションなので、契約プランの支払金額、太陽光の容量と設置位置、地域を入れると簡易シミュレーションが計算してくれます。

上がPVシミュレーションに対して、下が蓄電池(BT)追加verです。

円だけではなく、KWhベースで表現してくれると良いのですが…。なのでこの結果をKWhに変換して実力評価を出来る様にBT追加前後の表を合体します。

 

次に、売電単価を16¥/kWhと仮定した場合、電力量が買電と売電で一致する必要がある為、買電単価を調べると31.04¥/kWhとなりました。これをベースに買電量が何KWh減らせたのか?と自家使用率の改善代を改めて確認した結果が以下になります。

(初年度の諸元の確認)

5KWの蓄電池で5.2KWh/日平均はちょっとやり過ぎ(盛り過ぎ)感がありますがおおよそ17%の自家使用率改善効果がある様にみえています。蓄電池は実効容量があるので(定格とは別に)この加味と、使用に伴うの容量低下(劣化要素)があるので注意が必要です。

◆このシミュレーションで分かる事◆
1.支払い金額から電力使用量とPVの発電量に対して蓄電池の過不足感がわかる。
2.凡その地域差、設置方角に応じたPV発電量とBTの効果が粗試算できる。
3.改善諸元が確認できる。

注意すべきは、お日様エコキュートを導入すると4KWhの蓄電池相当のPV消費が日中に発生する為、上記の計算では凡そ4KWh相当のPVの余力がまだある事が分かりますが(図の濃い青色)、PV発電量が不足した場合はこれ以上蓄電池を増やしても蓄電池の効果が出てこない事が見た目で理解しやすいですね。裏を返すと5.4Kwhの太陽光パネルであればお日様エコキュート+5Kwhの蓄電池でも十分良い所まで攻められている事が確認できました。

次に、年間予想を進めていきます。考慮すべきは、電力単価の変動要素です。

youtu.be

松尾先生が紹介されている様に、電気料金は年間1.26円のペース(+4.8%)で上昇しており、前回紹介した今泉さんの動画の様に燃料調整費とは別の「賦課金」が上昇する見込みもある事に加えて、上記の動画の様に炭素税の導入による増加リスクもあり、あらゆる要素で電気コストが上昇する可能性しかありません…。

shinshin-msi-thanks.hatenablog.com

賦課金の上昇予測

これらが買電価格の上昇要素。一方で、売電価格の下落要素は以下を参考にしました。

www.rts-pv.com

価格が減少するのは、設備・工事費の低下と賦課金調整のバランスになりますが目標がまだ低い所にあるのでまだまだ上図の通りに下がり続ける見込みです。結果、発電の売却価格が確実に減少する為に、導入が早い程PVとしてのメリットは大きくなります。一方で、蓄電池の効果としては買電価格と売電価格の値差につき、10年間はステイ、11年目からこの影響がもろに(プラスに)出る形になりそうです。

これらを踏まえて、蓄電池寿命等を加味して期間を15年と想定して15年NPVを評価してみます。一旦私の場合は利益率を3%で想定しました。

エクセルでNPV関数と打ってみてください。簡単に算出できます。

設置費用はHMの割引状況や補助金他いろいろな要素が有ろうかと思いますが、我が家は3%の利回りを考慮しても投資判断すべしとなりました。(HMさんに迷惑をかけない様に設置費用箇所が読めるところは黒塗りで消しています。逆算できてしまいますがね…)15年目でプラスになり、投資回収できたという結果です。仮に20年まで故障なく使用できたと仮定して、15年以降はプラスで効果を回収できる事になります。仮に蓄電池が故障して、再投資(パワーコンディショナー交換、電池交換)する事になったとしても、配線工事やPVとの接続に関しては次回の投資額を圧縮できる点でもメリットがあります。ただし、今回の計算はあくまでも電力単価が増加する前提で走っていますので、ここは各々の考え方次第です。NPVの考え方が大事で数字設定は状況によりますので完全に「自己責任でお願いします」。私はこのように考えたというだけです。

これに加えて、蓄電池の良いところは、太陽光との相性が最高に良く、災害時に最大限の効果を発揮します。太陽光だけを載せていても、最も使用したい夜中に電気が使えません。先日の記事の通り、全負荷型の200V対応ハイブリットパワコンを導入する事で、災害時の電力トラブルリスクを激減できます。仮に、上記のNPVが若干のマイナスとなっても、他の金額に落とし込めていない付加価値も含めて判断される事をおススメします。

これらをもってして、私は「断固たる決意」をしたのでした。(笑)

本日は以上です。