MSダンパー設置のすすめ(その②)

MSダンパー

こんにちは。Larkです。

本日は、耐震設計の続編です。以前記事にした

shinshin-msi-thanks.hatenablog.com

では、制振ダンパーの計算書を紹介しましたが、これを受けてメーカーさんに質問した内容とその結果(大分前に回答頂いていたものの、庭に夢中になっていて記事にできていなかった)を受領したので紹介させて頂きます。

Q1 構造計算と制振設計の重心差異

『偏心率が構造計算書と大きく異なっていた為、計算内容を比較したところ、偏心距離の差の様です。1Fと2F座標の差が大きく、1Fは重心算出方法に、2Fは剛心算出の差と理解しました。2Fの剛心座標の差は構造計算書が耐力壁のみで、本計算はその他壁量も計算している所の差異+剛性計算の差異で理解できますが、重心座標についてはなぜ1Fの重心算出に総合重心を使用されているのか理解ができません。加えて、総合重心と2Fの重心結果が完全に一致してしまっているのですが計算は正しいでしょうか?

<Ans>

計算方法の考え方になりますので当社が使用しております計算ソフトの(株)○○社からの回答をご提出致します。

耐震診断Pro」の限界耐力計算による耐震診断においては、各階とも固定荷重および積載荷重が平面的に一様に分布し、偏りが無いものとし、平面の図心が重心に一致するものと仮定して計算しています。
 ※耐震診断では、梁や柱を伝わる軸力などの数値を直接扱わないため、
  このような計算を行っています。
よって、「その階の外周壁で囲まれた部分」の面積で計算するため、建物の形状によっては各階で重心位置が同じになる場合もあります。恐れ入りますがご了承いただければと存じます。

計算比較

Q2 偏心率改善を目的にダンパー設置配置は検討できないか?

Q1の結果が正しいと仮定すると、1FXと2FXのの偏心率が大きくなった事で偏心率0.15を超えてしまい

 ①ねじり影響を大きく受ける
 ②Fep低下に伴う安全限界荷重の低下

を招いています。一方で、ダンパーの設置個所についての検討状況が報告書から読み解けませんでした。ダンパーの設置に関してはEg吸収目的もあろうかと思いますが上記の偏心率改善・補強の視点での設置検討も重要と考えますが、検討されていないのでしょうか?

Q3 南面へのダンパー設置提案と北面の方が個数が多い根拠の確認

偏心率を補強する配置を考えた際、我が家で起きている偏心率増加影響は南面への応力集中と読み取れます。にも拘わらず、北面が3個、南面が2個のバランスとなっています。そもそもダンパーの粘性低減効果は添付論文の通り、層間変位が大きい場所(変位速度が大きい場所)が最も効果を発揮する事を考えれば 荷重集中が大きい場所(南面)に多く設置するべきと考えますが(せめて北面2 南面3or4)南2個、北3個とした根拠を教えて貰えますでしょうか?

<Q2&Q3 Ans>

おっしゃる通り偏心率も参考にしながら配置計画を実施しており荷重集中が大きい場所(南面)に基本的には配置計画を実施する傾向がありますが今回 北面2箇所 南面4箇所に設置した場合でも数値的に変化はなくエアコンの設置予定位置として図面に記載がございましたので今回の配置計画となっております。

参考までに北面2箇所 南面4箇所の計算書をご提出いただきました。

Q4 ダンパーの標準骨格曲線(スケルトンカーブ)の前提について

ダンパーの標準骨格曲線は非常に小さく見え、吸収Egとしても小さくみえますが (ノボパンの破壊吸収Egが大きすぎるだけかもしれませんが)この算出はどうやって出しているのでしょうか?そもそも、ダンパーの粘性抵抗力は加速度(速度)に依存すると思いますが、この前提条件があったりするのですか?

<Ans>

限界耐力計算で必要な性能値をフレーム試験を実施し算出しております。MSダンパーは剛性が小さく曲線も小さいですが減衰定数が制震効果のポイントとしております。また計算には反映されないMSダンパーの最大の特徴は極低速から減衰力を発揮し、ストロークの速さに依存することなく一定の減衰効果を発揮できる特性となっております。

Q5 制振ダンパーの設置数に関する質問

以前にお話しを伺った通り、層間変形角が大きい1Fを優先して配置するは今回報告書から納得しました。一方で、添付の論文の様に、「ダンパーは層間変位を抑制する反面上階への加速度の伝達を、非制振の場合より増加させるので、最大値に留意する」とありますが、これを考慮しての設置数を減らされたのでしょうか?

<Ans>

設置数は始めに建物の面積によって決めており1階の床面積が19.41m2でございましたので12本で計画しております。限界耐力計算を実施し加速度低減率が0.60以下を目標値としております。目標値に満たない場合は使用本数を増やす形でご提案をさせて頂いております。

Q6 制振ダンパー(MSダンパー)の2×6工法への最適化

ダンパーの等価剛性と設置面剛性の剛性比に減衰定数を最大化する最適比がある様ですが枠組み工法(ノボパン面材)に合わせたダンパー剛性に最適化されていたりするのですか???

<Ans>

MSダンパーは木造一般戸建て住宅用に開発した製品のため一種類となります。

相談1 ふかしによる剛性UPとこれに伴う2Fへのダンパー設置の必要性

ふかしの説明※~北面と東面の2F剛性は計算値よりもかなり増加し偏心率としても大きくなると想定しています。なので、2Fの南面へのダンパー設置の補強は上記施工ベースでは実施した方が良いと感じているのですがご意見いただければと思います。

<Ans>

MSダンパーは剛性を向上する目的の製品ではないため2Fの南面に設置頂いても効果は期待できません。また京都大学の磯田先生は、優先し検討するポイントは偏心率改善よりも剛性を高めることが大事とおっしゃっておりますので弊社の見解ではございますが今回 ふかし壁構造の部分は計算値に含まれない余力となり建物としては良い方向にはたらいていると存じます。

※ふかしについての過去記事

shinshin-msi-thanks.hatenablog.com

 

めちゃくちゃ面倒な対応だったにも拘わらず勝手気ままな質問にも大変丁寧に御回答頂きました。これで安心して設置する事ができます。丁寧に回答頂きました制振システムの担当者様には本当に御礼申し上げます。ダンパー数に関してもメーカーとしては設置数を増やした方が利益が出る所ですが、効果が小さい箇所は当初見積数より少なくても適正な数で御提案頂きました。更にはQ2/3にある様にエアコン配置の事迄ご配慮頂けてる状況で頭が上がりません…。

最後のふかし剛性に関しても以前の記事の佐藤さんのご意見と同じでバランスをとって剛性を弱めるくらいだったら剛性をとった方が良い。と同じ意見を仰られているのでより安心しました。

 

如何でしたでしょうか。MSダンパーお勧めです。ウィザースホームで建てられる方には強く・強くお勧めします。以上です。