大地震を想定する。保有水平耐力とは?限界耐力計算とは?(耐震設計についてその④)

 

こんにちは。Larkです。

本日も耐震設計です。前回までの記事で、許容応力度計算(地震力の算出)、層間変形角、剛心率、偏心率による壁バランスの確認と構造計算書を読んで中身を確認してきましたが、今回はその先になります。構造計算ではいわゆる「ルート2」で完了しており、保有水平耐力の確認までいきません。

所謂許容応力度計算では、Coの0.2倍(基準法ベース)、耐震等級3で×1.5倍した加振力に耐えられるか?を確認してきた訳ですが、これは「中規模地震損傷しないで耐えられるか=弾性範囲内で耐えられるか≒繰返し耐えられるか」を意味しています。これに対して、保有水平耐力計算は「大規模地震(Co×1)損傷は許容するも倒壊されずに生きながらえるか=弾塑性範囲で壊れきらないかを確認するルートがあります。実はあまり知られていないと思いますが、ウィザースホームでは以前紹介した「制振ダンパー」を設置する場合この保有水平耐力計算に相当する構造計算を実施頂けます。(中身は要求しないと計算結果のまとめだけしかもらえませんでしたが…)

それでは、保有水平耐力計算の概念とこれに相当する限界耐力計算についてご紹介したいと思います。

保有水平耐力とは…

保有水平耐力は「住宅が損傷しても倒壊して死なない」設計を意味します。なぜならば超巨大地震に降伏しないとんでもない剛性の家は非現実的だからとLarkは解釈しています。ただ、重要な意味があり、降伏して(弾性域を超えて)損傷しながらも、住宅がEgを吸収しつつ耐える計算の中に「歪みEg」の概念が発生するのです。構造力学や塑性力学を勉強している人からすれば分かり易い概念です。金属の弾塑性モデルを木造の建物にEg法として適用している、とLARKは解釈しました。

結果、塑性歪みに相当する吸収Eg(金属や粘弾性体)が大きい程小さい耐力で良いよ、吸収できない脆い(脆性体)程必要な耐力が大きくなるよ と言っています。

一方で、変形が進む程「損傷が進む」事を意味するので、吸収Egを大きくとる程被害を小さくできるとも言い換えられます。

次に、限界耐力計算なるものが存在します。

限界耐力計算とは

(限界耐力計算)
第82条の5
地震による加速度によつて建築物の各階に作用する地震力を次に定めるところによつて計算し,当該地震力が保有水平耐力を超えないことを確かめること。

限界耐力計算

限界耐力計算

限界耐力計算2

限界耐力計算2

限界耐力計算3

限界耐力計算3

流れとしては、「いずれかの階が崩壊」=「建物が崩壊」する変形・質量分布を1質点系に変換し、シンプルな「ばねの1自由度系」とする事で「限界固有周」を算出。次に、実際の地震実績データの加速度応答スペクトル等に算出した限界固有周期と「地盤に応じた加速度の増幅率」を考慮し建物に加わえて、加速度を算出。建物の減衰特性を考慮して、加速度の低減率を算出した上で多質点系に戻し、各階の加速度からせん断力に変換し各階の保有水平耐力と比較し安全性を確認する。

POINTは加速度応答スペクトルにぶち込むだけで○○地震や××地震を簡単に再現できるという事です。(youtubeで”ウォールスタット”と検索してみて下さい)前回記事にも書きましたが、実際は地盤によっては(軟弱地盤であれば)プリンのように、基底の地震(加振力)は増幅されます。しかし、許容応力度計算では割増計算をしていません。ここら辺が信頼に足りますね。ただ、微動探査による増幅率の算出とセットが一番確実そうです。最後に、建物の減衰特性で加速度を低減する訳ですが、ここにダンパーのような減衰装置が効いてくる???事が容易に想定されます。

youtu.be

ウィザースホームではこの限界耐力計算結果をダンパー設置に伴う制振効果計算書として受領する事ができます。

ただ、限界耐力計算の中で予想に反して耐力面材(ノボパン)の塑性変形吸収Egが大きい事が我が家の計算書の中で判明した事が意外でした という次回の触りを紹介して本日は終了です。