液状化リスクを知る

こんにちは。Larkです。

先日の記事に引き続き、液状化について勉強します。

shinshin-msi-thanks.hatenablog.com

 

大金をはたいて購入する「土地」にどんなリスクが存在しているのか、後から知っておけば良かった、とならない様にリスクを理解し勉強しておくことは大切だと思います。

 

前回の記事では、

を紹介しました。今回は、技術屋目線で液状化計算の数字を具体的に追いかけて何がどう影響しているのかを理解していきたいと思います。

液状化簡易判定計算内容の確認

今回の資料は千葉県香取市の計算資料になります。

https://www.city.katori.lg.jp/living/sumai/ekijoka/kentoiinkai/dai3kai_shiryo.files/2013-0607-1306.pdf

前回の記事でも書いた様に、液状化の判定にはSWSのN値(荷重条件)だけでなく『土質』と『地下水位』が重要パラメータ(必須)になってきます。香取市役所の場合、N値の項目、右上の地下水位面が1.5mと記載されています。また、有効上載圧や全上載圧の記載や、細粒土含有率の調査結果項目があります。

有効上載圧と全上載圧は以下の地下水の水圧分を含めた土圧が全上載圧で地下水圧分を除いたものを有効上載圧となっています。

ここで、地下水圧分が以前の記事で神村さんがコメントされていた「間隙水圧」の要素となり、間隙水圧が除かれた有効上載圧は土粒子に働く力として重要な要素となります。

上図の様に、地下に深くなるほど有効上載圧が増加していっています。

簡易法による判定では

①想定加速度からせん断振幅を算出

上式から両辺に有効土被り圧(有効上載圧)を掛けるとTdのせん断応力振幅が算出できます。今回の前提条件では、設計水平加速度αmaxは249gal、γnはM9前提で0.8、γdは低減係数で深さに応じて(1-0.015×深さ)で算出されています。

これを代入すると確かに各深さ毎のせん断応力が算出されました。

②補正N値の算出

次に、補正N値を算出しています。補正N値は以下の式を使用しています。

有効上載圧を100kN/㎡に換算したN値を換算N値としてN値を変換。ここに補正N値として細粒分含有率が考慮されます。グラフから細粒分含有率が大きくなるほど補正N値が大きく寄与しています。今回、4.5m位置はもともとN値が12である事に加えて細粒分含有率が49%と高い為に局所的に補正N値が27.87と大きくなっています。

液状化抵抗比の算出

次に、算出した補正N値を元に液状比抵抗値を算出します。

経験式か実験式と想定されますが5%せん断ひずみ振幅線が、液状化or非液状化のクライテリアとして判断できる様です。

このグラフから、限界せん断力比(限界せん断力)を読み取る事が出来ます。補正N値が大きい程(特に20辺りから急激に)抵抗比が大きくなる(耐えられるようになる)事が良く分かります。

④①で求めたせん断力/有効上載圧による推定せん断力比と③の比較

最後に①と③を比較して限界値に対して実績値が超えているか超えていないかを比較し、これを安全率FLとして算出しています。

今回のケースでも、深さ10m~13mで深さ4.5m付近と同じ様にN値が10を超えているにも関わらずFLが1を満たせていないのは、細粒分含有率が6%と小さく補正N値が確保できていないが為に液状化抵抗比が小さくなってしまった点で差が確認できます。

結果として、各深さ位置毎のFLが算出できました。

液状化危険度PLの算出

最後に液状化危険度を算出します。

FLが小さい程液状化の程度が悪いという事になり、各深さ毎にF(1-FL)を深さ20m迄積分していきます。深さに応じて重みを変えている様で、浅い程影響が大きいものとして

W(z)=10-0.5Z

を重みづけして積分しています。結果、PL37.6が算出されています。

これにより、非液状化層厚とPL(液状化指数)を確認できた訳です。

 

神村さんの動画でも紹介があったように非液状化層厚とPL値から液状化被害のリスクを評価でき、被害リスクが高い場合は対策が必要になってくるという結論に至ります。

過去の液状化資料の確認

液状化判定計算を理解した上で、過去の液状化調査資料をみると実態が良く把握できます。下記リンクは液状化が良くまとまっている講義資料リストです。

住宅の液状化被害にそなえて/千葉県

一部を抜粋していきます。

旧河道や旧湖沼のリスク

旧河道や湖沼は局所的な谷かつ不透水層になっている上に砂で埋め立てられている可能性が高く、局所的な液状化リスクが高い事が想像できる。

本資料では740年前の履歴など追えるか!?となりますが、自然堤防から旧河道を予測(要注意)できるのでリスクがあれば土質調査を実施するが危険予知としてよろしいと指摘してくれています。また、昔の写真を見る事や地図を確認する事の重要性を再認識させてくれます。

別資料でも水路の埋め戻し箇所、干拓地は被害が大きい事から、やはり透水性の悪い場所の上に砂で埋め立てた所はそもそものプリンのように振幅が大きくなりやすい上で液状化に必須な水が存在する為に局所的に液状化が発生し易い事が想像できます。

但し、自然堤防でも液状化しない場所もあり、やはり液状化判定(土質調査)の重要性がうかがえます。

東日本大震災時の液状化報告書からもいくつかのメカニズムが見えている様です。

www.pref.chiba.lg.jp

上記のオレンジの帯状にみえる液状化発生群は氷河期の海面低下による図9の『谷部分』『比較的柔らかな沖積層『厚く』堆積している事で、地震動が更に増幅して被害を増大させたと整理されたようです。更に実際に発生している箇所は斑状に赤でハッチングされていますが、ここは埋め立て時の土砂埋積時の流入口箇所に沈降速度の速い砂が、沈降速度の低い泥分が離れた所に堆積した結果、スポット状に液状化リスク箇所が生じたと想定されている様です。

このように、局所的な液状化リスクが大規模地震では発生する為、『過去の土地』を理解し、建築時には地層を理解しておく事がKYとして重要である事が分かります。

最後に、千葉の方はオープンデータとして地質柱状図も公開されていましたので以前のリンクと併せて、購入予定地の周辺データを確認されると宜しいかと思います。

https://map.pref.chiba.lg.jp/pref-chiba/OpenDataDetail?lid=630001&mids=6300

因みに我が家はすぐ3m下で基盤が出てきてくれたのと先日のリンク資料や周辺環境を確認した結果も問題なさそうでしたので土質追加調査は見送りました。ただ、少し近くの公園や保育園が旧河道だったのには驚きでしたが…。

本日は以上です。